窮鳥懐に入れば/上
「なんだ、晋助に飲ませようと思っていたのに」
「ふん。お前さんの玩具になんざ、されてたまるか」
やけにとげとげしい会話に、目が覚めた。自分を見下ろしているのは、サングラスに大きなヘッドフォンの男と、顔半分を包帯で覆った、小姓のように中性的で端正な顔立ちの人物。
その仲間も近くにいるようだ。
「残念ですねぇ。高杉様なら貧乳が似合うと思って、特別に調合したんですよ。あと、スクール水着も用意しました」
「だったら、客人に着せてやれ」
「高杉様でないと萌えません」
何をごちゃごちゃ言っているのか理解できないまま体を起こすと、激しいめまいでふらついた。
「僕は、一体……?」
着ていた着物が、なぜか肩からずり落ちそうになる。酒食の最中だったらしい座敷の様子に、自分がさっきまで何をしていたのか、徐々に思い出してきた。
「僕は、貴方に酒を注がれて……そして、どうなったんだ?」
やけに苦くて匂いのキツい酒で、喉が焼けそうだった。それでも宴席だからと無理に飲み干したら、猛烈に吐き気が込み上げてきて。でも吐き出せなくて、苦しさに身体を折って手を床について……そこでブラックアウトしたんだっけか。
「なぁに、うちの部下どもの悪ふざけさ。来島、伊東の服を着付け直してやってから、屯所のそばまで送ってやれ」
キジマと呼ばれた女に連れられて、奥座敷のような部屋に入る。華やかな金屏風に赤い連子が、まるで遊郭のようだ。
呆然と突っ立っている伊東を尻目に、来島は長箱を引っ張り出すと、サラシだの襦絆だのを出してきた。
「服、脱ぎな」
「は?」
「汗かいてるだろうから服を脱いで、拭ったらこれに着替えるッス」
「君の目の前で?」
「オンナ同士だから、問題ない」
「オンナ同士?」
「ぐずぐずしてると、また熱がぶり返してくるッスよ」
確かに今は、目が覚めた直後に感じていた具合の悪さがかなり収まっている。
オンナ同士という言葉に引っ掛かりを感じながらも、ノロノロと袴の紐を緩めた伊東は、次第に己の身体に起きた変事を理解して、頬が引き攣った。
「僕の体がっ……どういうことだ?」
「だからぁ、あのエロオヤジとスケベグラサンが晋助様に飲ませようとしたクスリを、アンタが飲んでしまったんス」
「クスリ……だと?」
「天人の超テクノロジーっす。ウチらは春雨だけじゃなく、いろんなトコとも情報交換をしてるから」
伊東の体には、そこにあるべきモノが影も形も無くなり、そこには無かった筈のものが僅かながらせり出して……ひとことで言えば、性転換してしまっていたのだ。
そういえば、どこぞの宇宙海賊の一派が地球に持ち込んだという違法ドラッグにそういうのがあって、真選組でも押収して人体実験したことがあるというレポートは読んだことがある。出張中だったので詳細までは知らないが、屯所でもかなり騒動になったらしい。
「メガネ、大丈夫スか?」
「は?」
「外してみて」
言われるがままに眼鏡を外し、視界が隅々まで鮮明なことに驚く。それどころか、今まで目眩がしていたのはどうやら眼鏡のせいだったのか、頭までスッキリしてきた。
「目が……?」
「やっぱりね。後天的要因は継承しないらしいんすよ」
「後天的と言っても……幼い頃から視力は弱かったのだがな」
唖然としながらも手拭いで汗を拭う。来島が手を差し出してきたので、乞われるままにぐっしょりと濡れた手拭いと眼鏡を手渡し、代わりに何やら小さな布を受け取った。
「何……パンツ?」
「大丈夫、新品ッス」
そういう論点じゃないと言いたいところだが声が出ず、そのパンティを手にした伊東の口がぽかんと開いたままになっているのを『着方が分からない』と解釈したのか、来島がひったくるようにそれを取り返すと、足元に膝まづき「こうして、ここを通して、ここを紐で結ぶんスよ」と手早く付けさせた。
「あの、この下着って、その」
「返してくれなくてもいいっすよ。一応、調べられても、足がつかないものっすから、そっちで適当に処分してくれたらいいっす」
論点が見事にすれ違ったまま、来島はさらに甲斐甲斐しく、肌襦袢を着せた伊東の腹回りをタオルで包むと、サラシを巻いて補正した。ついでに、そのままサラシで胸元まで締め上げる。元の伊東の着物を羽織らせて帯を結ぶと、その仕上がりに満足そうに、ポンポンと伊東の腹の辺りを叩いた。
「よし、これでバッチシっす。袴はサイズの合わせようが無いから、とりあえずこれだけでいいっしょ? パッと見ではオンナとは分からないっすから、元に戻るまでおとなしくしてたら、問題ないっすよね」
「元に……戻るんだな」
「一応。正確に言うと、そのクスリを参考にして、武市ヘンタイがロリータ製造用に特別調合した試作品らしいっすから、ハッキリした効果は正直、分からないんすけどね」
「ロリータ製造用ね」
伊東はサラシで潰されて、見事にまったいらになってしまった己の胸を見下ろし、苦笑した。
大胆にも、来島はタクシーを真選組の屯所の門の真正面までつけさせた。同乗していた伊東の方がハラハラしたが、妙にコソコソしている方がかえって怪しげで人目につくのだと説明して、来島はケロリとしていた。
「はい、コレ。アンタの下着と袴と……あと眼鏡、この中ね。倒れてて食べれなかった分のお食事、折り詰めにして貰ったから、夜食にでも食べるといいっす。食欲出ないかもしれないけど、お腹すくとサカりやすいって言うし」
「サカる?」
「いいから、おとなしく部屋で弁当食べて、布団かぶって寝てるんだよ」
「わ、分かった」
「あと、ちょいと身の丈が縮んでるから、着物の裾踏んでコケないように気をつけな、いいね?」
まるで口喧しい母親のような口調でまくしたてると、上品な茜色の風呂敷包みを手渡す。勢いに気押されて伊東が頷いたのを見届けると「大橋まで戻って」と運転手に告げた。
走り去るタクシーを見送ってから、正門横の木戸をくぐる。頭を提げたときに、再びフラッと目眩を感じた。
熱がぶり返すかも、って言ってたな。やたら額や頬が熱いくせに、身体の芯からゾクゾクッと寒気もこみ上げてくる。いや、寒気だけじゃなくて、なにやら妙な気分も。
なんとか玄関まで辿り着き、しばらく冷たい三和土にぺったり座り込んでいたが、やがてのろのろと履物を脱ぐ。手から包みが滑り落ちていたが、それを拾い上げるのも億劫だった。
とりあえず、どうしたらいいんだっけ。部屋に戻れって言われた。部屋でねてろって……誰に? 女のひと、ははうえ? だったらいうこときかなくちゃ。ぼくのへやは……どこ? 立ち上がって歩こうとすると、平衡感覚を失っている身体が壁にぶつかった。
「伊東先生? どうしました?」
振り向くと、ゴリラのような大男が立っていた。
そのはだけた衿からのぞく胸毛の濃い胸元を眺めて、伊東は『温かそうだな』と、ぼんやりと考えていた。
書類仕事が片付かず、深夜まで残業していたところだというのに内線で呼び出されて、土方はいささか不機嫌だった。ただでさえ、管理職だからという理由で残業手当がつかない『サービス残業』のため、虫の居所が悪いのだ。
「近藤さん、つまらん用事だったら、さすがに俺も怒るぜ?」
そう声をかけならがら一気に障子を開くと、室内からムワァンと生温かい空気が流れ出してきた。しかも妙に甘ったるい臭気が混ざっている。反射的に「素女丹か」と思った。
素女丹で女になったヤツの放つ、催淫成分を含んだ体臭……だが、それがどうして近藤の部屋から放たれるのか、見当がつかない。
「近藤さん?」
「おう、よく来てくれた。先生をなんとかしてくれ」
「先生?」
見れば、部屋の隅にへたり込んでいる近藤の膝に乗り上げるようにして、小柄な人物が抱きついている。
「誰だコイツ」
「誰ってアレだよ、伊東先生だよ」
「は? 伊東?」
すっとんきょうな声が上がったのも道理。自分とは相性が悪い上に、こんな悪ふざけが出来るとは到底思えない鼻持ちならないエリート面の野郎……しかも、今、目の前に居るのはそのコ憎たらしい伊東よりは明らかに一回りも二回りも、身体のボリュームが小さかった。
「どれ」
検分しようと、土方はその甘い空気を吸わないように軽く息を詰めながら近寄って、髪を鷲掴みにして強引に顔を上げさせる。トレードマークの眼鏡が無く、顔立ちも心なしか丸くて、全体にパーツの造りが小さいが、パッと見た印象は確かに似ていた。双子の妹と言っても通じそうだ。
「伊東?」
呼び掛けても、視点が合わずトロンとしている。頬が上気して唇が艶っぽく濡れており、その表情は誘っているようにも見える。
「こらこら、乱暴なことするなって。なんか、玄関先でフラフラしてたから、どっかで飲んできて酔ってるのかと思って肩を貸したら、こう、迫ってきてよ。よく見たら体も変だし……で、オマエならザキんときの経験で、なんとかしてくれるかと思って」
「俺は便利屋じゃねーぞ。ったく……ザキの時の経験ってぇことは、やっぱりオンナになってるのか。コイツ。それにしてもまた、薄っぺらい胸だな」
「そうそう、オメェ好みだろ、こーいう小さいおっぱ……って、ちょっ、トシ!」
髪を掴んでいる手を離したかと思うと、今度は衿元に手を突っ込もうとしたのだ。近藤が慌ててその手首を掴んで、止めさせた。
「んだよ。検分するだけだって……つか、オンナになっているんだったら、遠慮なく据え膳頂いたらどうだ?」
「据え膳って……ヤれってのか?」
「意識がはっきりしてないようだから、ヤっても覚えてないだろ、どうせ。アンタが嫌なら、裸に剥いて大部屋にでも放り込むか? 埴輪みてぇな胴体でも穴さえ開いてりゃ、隊士どもの格好のレクリエーションになるぜ」
「トシ、それなんてエロゲー?」
「さぁ。アンタと違って俺ァゲームは詳しくねぇから、なんてエロゲーか知らねぇよ……なぁ伊東。オメェ、ヤりてぇんだろ。身体が火照って、どうしようもねぇんだろ?」
露骨に尋ねると、伊東もおぼろげにその意味を理解したらしく、耳朶まで真紅に染まった。そのまま視線を伏せて頭を垂れたのは、俯いたのか頷いたのか。髪が短いせいで露わになっているうなじも、桜色に染まっていた。
「ヤりたいかって、そんな聞き方しなくても……第一、だからって、わざわざ嬲りものにさせるような可哀想なことするこたぁねぇだろ」
「じゃあどうしろっていうんだ? もともとコイツはアンタが拾ってきたんだから、文句言うんならアンタがなんとかしろや」
「そんな……オンナの扱いはトシの方が慣れてるだろ。だから、おめぇにこうやって頼んでるんだ。なんとかしてやってくれって」
「なんとかって言ってもなぁ。別にこんなもん、サカってどうしようもねぇんだったら、ビール瓶でも突っ込んでやりゃいいんだ」
「ちょっ、トシっ! それは人としてどうよ!」
「心配しなくても、これが本当にあの薬の影響なら、いくらブッ壊しても、身体が元に戻るときには治ってるはずだぜ?」
クックックッと、いかにも楽しそうに土方が喉の奥で笑うのを、近藤は薄気味悪そうに見やる。
「いやその、トシ……『窮鳥懐に入れば猟師も殺さず』っていうだろうが」
「悪い、近藤さん。俺ァ学がねぇから、水に落ちた犬は徹底的に叩く性質なんだ。それがイヤなら、コイツを俺に預けんじゃねぇよ」
茫洋としながらも、土方が露骨に向けている悪意は感じるのか、伊東は人見知りする子どものように、近藤にしがみついている。
「ほれ、アンタによく懐いてるみてぇだし」
「あーいやその、そうは言ってもだなぁ……俺ァ経験が足りなくてよ。こう、どう扱っていいのやら」
「だから、その経験値稼ぎとやらに使ったらいいじゃねぇか。アンタの好きなエロ漫画でやってるようなプレイ、片っ端から試したらどうだ?」
「人選ミスったかなぁ……分かった。おめぇにはもう頼まねぇよ。正直、貧乳は好みじゃねーんだが、なんとかする」
ため息を吐きながら、近藤が伊東の頭にごつい掌を乗せた。猫のように目を細めながらおとなしく撫でられている伊東の表情を見ているうちに、何かに思い当たったのか、土方がぴくりと眉を吊り上げた。
「近藤さん……もしかしてアンタ今、コイツのクスリの影響受けてねぇか?」
「え? 影響?」
「多分、そうだな。ホダされてやがんだな」
土方は伊東の衿首を掴むや、そのまま強引に引き剥がし、畳の上を引きずり倒すようにして縁側まで運ぶ。
「ちょっ、おまっ!」
「匂いがこもってるんだよ」
手荒に扱ったせいか、裾がまくれ上がり、白い腿までが露わになっている。確かにその脚は女のものであると見てとれた。
「元に戻るまで、預っておけばいいんだな?」
「まぁ、そうなんだが……そういう扱いはよせ。ちゃんと丁重に扱ってやれ」
「善処するよ」
「トシ。俺からのお願いだ。くれぐれも無体なことはしてくれるなよ」
「アンタのお願い、ね」
伊東だという女は、引き回されても悲鳴ひとつ上げなかったが、ただ朦朧としていたわけでもなく、瞳の奥に憎悪を含んで土方を見上げている。
「テメェ、そういうカワイくねぇツラしてると、本当に大部屋に放り込むぜ?」
「トシ」
「冗談さ……じゃ、山崎は、アンタが足止めしてくれよ?」
「あーそうか。それもあったな」
「忘れてたのかよ。まったく」
「そうだな、総悟と永倉君あたりも呼んで、徹夜UNOでもするか」
「頼むぜ」
話がまとまったところで、逃げようとしている伊東の腰帯を掴むと、強引に抱き上げた。
副長室に戻り、ふすまを足で蹴り開けると、伊東を畳の上に抱き降ろす。渡り廊下で冷たい風に当たったせいか、かなり熱っぽかった身体は平熱に近づき、意識もはっきりしてきたようだ。
「ちっと待ってろ、布団敷いてやっから。まぁ、畳の上の方が燃えるってんなら、それでも構わんが……ああ、仕事ほっぽらかして来たから、散らかってるな。寝床の支度ができるまで、そこいらの書類片付けておいてくれや」
「なんだって、僕がわざわざ君の部屋の片付けをしてまで、君の世話にならなきゃいけないんだ」
そんな生意気を言える程度には回復したか、と土方は苦笑する。やけに表情があどけなくなっていたものだから、てっきり性転換に伴う高熱で、脳もやられたのかと思ったのだがな。
「それは俺の台詞だ。恨むなら近藤さんの巨乳好きと、テメェの平たい胸を恨め……別に、元の身体に戻るまでこの部屋に匿っているだけでいいのなら、それでも俺は構わないしな」
「……匿って?」
「俺がわざわざ放り込まなくても、誰かに見付かりゃ引っ張り込まれて、玩具にされる可能性もあるってこった。女の細腕で自衛できるほど、うちの隊士共はか弱くねぇし、紳士でもねぇ」
そう説明しながら、土方が敷き布団を広げて、その上にどっかと胡坐をかいた。腰に差していた大小を鞘ごと抜いて枕元に置く。手招きをすると、書類を拾い集めて机の上でトントンと揃えていた伊東が、手を止めて膝でいざって近寄ってきた。
「仕方ないから君で我慢してやるけど、接吻は……嫌だな」
「偉そうに贅沢言える立場か」
手が届きそうな距離まで来て、怖じ気付いたように伊東の動きが止まる。だが、土方は頓着せずに手を伸ばして腰を掴むと、強引に抱き寄せて膝に乗せた。有無を言わさずに衿に片手を突っ込んで、はだけさせる。
「君は強引だな」
口調は平静を装っていた伊東だったが、さすがに語尾は上ずっていた。
一方の土方は、露わになった胸元が厚く包まれているのを見て「ただでさえ体温が高くなっているのに、こんなんしてたら余計に暑いだろうが」と呆れていた。
帯を解き、サラシが胸元から腹まで覆っているのを見てとると、ほどくのも面倒だとばかりに脇差しを拾った。鞘を払って逆手に握り、刃先を胸の谷間に押し当てるや否や、一気にタオルや襦袢ごと切り落とす。
押さえ付けられていた胸乳が、ぽろりとまろび出てきた。てっきりズン胴だと思っていたが、それはわざと腹回りを太く補正をしていたからで、裸の腰回りはほっそりしている。それを見下ろした土方は唇を軽く舐めて、脇差を鞘に収めた。
「痛いじゃないか、この芋侍が」
「武士がハラキリぐれぇでガタガタ言うな」
実際には、白刃は柔らかい肌の上を滑った程度で、血は滲んですらいない。うっすらと静脈が透けて見えるほど白い、その微かな膨らみに「Bカップぐれぇかな」と呟いた。
「陥没してるぞ」
「え?」
乳房を掴むと、頼りないフニャッとした感触が掌に返ってくる。その小さな先端は隠れ気味になっていた。屈み込むと、その先端に吸い付いた。舌で小さな果実をえぐり出すように嬲る。
「やっ、やだっ……やめろ、貴様ッ」
肩を揺すって後じさり、逃げようとする。まるで脱皮でもするかのように、切り裂かれたサラシや襦袢が脱げていった。そのまま追うと、自然と覆いかぶさる姿勢になる。胸から引き離そうとしてか、伊東が土方の髪を鷲掴みにして力任せに引っ張った。
「いでっ、嫌がるにしても、もう少し可愛げのある抵抗しろよ」
「嫌というか、くすぐったいんだ」
「そうか? 乳首、立ってきたぜ?」
「おぞ気が走るわ、下手糞」
「んだとコラ。これでもテクには自信あんだぜ? ともかく、手ぇ離せ。ハゲる」
「え? ああ、すまない」
恐る恐るという手付きで、伊東が手を引く。
ふと、妙な顔をして、その掌を土方の着流しの胸元になすりつけた。
「髪……べたべたしてる」
「フツーにワックスしてるだけだ。つか、どこで手を拭いてるんだ、ボケ」
「だって、キモチワルイ」
確かに、伊東は普段から短い髪に、整髪料の類いを付けていないようだった。
細く腰のない髪質のため、ワックスやムースをつけると、かえってボリュームが無くなるのだろう。毛色が淡いこともあって口さがの無い連中は、陰でヒヨコ呼ばわりしていたようだ。
「まったく……嫌ならやめるぞ。俺だって、無理にテメェとヤりてぇ訳じゃねぇんだ」
上半身はあれだけ厚く包んでいたくせに、下半身は着物をめくるとすぐに下着が現れた。一瞬ノーパンかと思ったのは、身体を覆う面積が極端に少ない上に、肌に似た色をしていたせいだ。
「ずいぶんと色気のあるパンツ履いてるじゃねぇか。テメエの趣味か?」
からかうように囁きかけながら、滑らかな腹に手を滑らせる。伊東がそれに対して何か答えようとしたらしいが、下着越しに秘部を撫で回されたせいか、吐き出されたのは「ひゃっ」という言葉にならない奇声だった。
ふっくらとした丘に押し包まれた微かな谷間は、小ぶりな胸乳と相俟って、まるで幼女のようだ。まさか、アソコのつくりもガキなんじゃねぇだろうな、そんなのを手ほどきするような、七面倒くさい手間ヒマかけるのは二度とゴメンだぜ……半ばウンザリしながらも下着の脇から指を差し入れ、柔らかい肉をそっとかき分けると、現れた蜜壷は既に熱い蜜を溢れさせていた。花芯を嬲りながらその入口を掻き回すと、湿った音がした。
「んだよ、カラダは素直なくせに」
伊東がビクッと全身を痙攣させた。腰を引いて逃げようとするのを押さえつけて追い込むと、熱い汁が噴き出して下着を濡らす。
「ほれみろ。テクには自信があるって言ったろう?」
だが、声をかけられた側は、それに返事をすることもできず、ただ、荒い呼吸を押し殺すように唇を噛んで、土方の着流しの衿を握りしめている。その強ばった表情を見下ろした土方は、ふと「もしかしてコイツ、誰かと肌を合わせるってぇのは、初めてなんじゃないのか」と、思いついてた。だとしたらちょっと苛めすぎたかな、と軽く反省しながら、下着の紐の蝶結びを引いて解いてやる。
怯えたように硬く閉じている目蓋に唇を落とすと、あらためて全身を解きほぐしてやるように、ゆるゆると愛撫の手を滑らせ始めた。
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