ひとつひいてにんじん


坂田銀時には隠し子がいるらしい、という噂を聞き込んできたのは、お登勢であった。

「団子屋の娘が連れてたんだが、そりゃあもう、くりんくりんの髪といい、ウサギみたいな紅い目と白い肌といい、坂田の旦那にそっくりだったよ」

「団子屋の娘って、魂平糖の爺ィんとこのかイ」

ウチの店子は、よそ様にとやかく言える程の二枚目でもないが、そこまで極端なブス専でもなかった筈だが……と、首を捻りながら本人に確認してみると、まるっきり心当たりが無かったらしく、目玉をひん剥くようにして「ハァアアア?!」と喚かれた。

「ともかく、一度その団子屋をのぞいてきたらどうだイ。私も行くよ。アンタの子供なら、アタシにとっちゃ孫みたいなもんだからねェ」

「いやいやナイナイ、団子屋の娘って、あの岩盤娘だろ。無理無理、いくらボックスドライバーになろうとハンマーになろうと、アレに突っ込むのは無理。ダメ絶対」

「でもアンタ、酔っぱらって、しょっちゅう記憶なくしてんだろイ」

むしろお登勢がノリノリで銀時を引きずるようにして、くだんの団子屋に乗り込んだ。団子一筋の老人と、その一人娘が切り盛りする、なんの色気もない古びた店だ。お登勢が「ごめんなさいまし」と声をかけよう……として、固まった。四角い顔に瓶底のような丸眼鏡、とゴリラのような無骨な図体の娘の背中には、確かに銀髪をポヤポヤと生やした赤ん坊がくくりつけられていた。

「ああ、アンタの子供だね。こりゃ間違いないよ、銀時」

「ちょ、昔、橋田屋のガキんときも、そんなこと言われて、俺、無実だったじゃん」

「あんときゃ『なんとなく似てる』って程度だったけど、今回のはビビッと来るんだよ。DNAが匂うんだよ。ババァには分かるんだよ……お累ちゃん、この子、名前なんてぇんだイ?」

お累と呼ばれた岩盤ゴリラが振り向いた。えっと、このガキが本当に俺の娘だったら、俺、コイツと致した訳? いや、コレとフュージョンするぐらいなら、長谷川さんとハッテンするわ。軽く死ねるわ。むしろこれこそが地獄? ここが地獄? 地獄だよね。日本の地獄は二百七十二もあるらしいけど、どんな罪を犯したらこんな目に遭うの? 俺、前世で一体何やらかしたの? 謝って済むなら土下座でもするわ。許してよマジ、三百円やるから。

「名前は、ねぇだす」

「へっ? 無いって、どゆこと?」

「貰い子だったんだす。だども、名前を書いた手紙なんかは無かったし、赤ん坊本人は名乗れねぇし」

「へ? 貰い子? マジ? そこんとこ詳しく話してくんね?」





茶屋の店先でひなたぼっこをしていた日輪は、血相を変えて往来を駆けてくる銀時を見かけて「おやおや、もうバレたのかしら」と、いかにもおかしそうに笑い、継子の晴太に月読を呼んでくるように告げた。

「月詠。旦那様がいらしてよ」

「だっ、誰が旦那様じゃ。アレか、あの天パの唐変木の甲斐性なしの宿六のことか?」

「あら、違ったのかしら?」

顔を真っ赤にしている月詠を見上げて、日輪がケラケラと笑っているところに、話題の人物が到着した。息が上がったまま何やら怒鳴ろうとして、何故かむせて咳き込んでしまった。日輪はニコニコしながら、月詠は狼狽えながら、それを見守る。やがて落ち着いて、いざビシッと言ってやろうと銀時が大きく息を吸ったところで、今度は晴太が「銀さん、お茶でも飲むかい?」と、話の腰を折った。
おかげですっかり毒気を抜かれてしまった銀時であったが「なんで、よりによってあの団子屋なんだ。おめーら、知ってたんなら止めろ」と、なじることは忘れなかった。

「知ってるも何も、他のお嬢さんに預けて、潔く責任を取られても困…」

言いかける日輪を肘で小突いて黙らせ「あの団子屋は、健気で一途で、良い娘じゃ」と被せた。

「そうそう、負ける気がしないから、母親を譲っても悔しくな……」

「わーわーわー!」

「母親を譲る? あのガキの母親って、まさか月詠、お前なのか?」

団子屋の岩盤娘・お累からは「吉原の女に託された」としか聞いていない。遊女故に育てられないが、棄てるには忍びない。引き取って貰えぬなら、くびり殺すしかない。後生です、何卒……と、雨の路上で土下座されては、断りようがなかったのだという。いや、不器量で嫁の貰い手も望めぬ娘にとって、思いがけず(それも珠のような)赤子を得るのはむしろ、またとない僥倖に思えたのかも知れぬ。
とりあえず、あの岩盤娘の股ぐらにインしてアウトになったのではないと知って安堵した銀時であったが、そうなると次は、別嬪であろう実母のことが気になってきた次第。そして、吉原の女のことなら、こいつらが把握していない由がない……と、殴り込みに来たというわけだ。

「つーか、吉原で産まれたガキなら、晴太みてーに、皆で育てりゃよかったんじゃねーの? しかもあの器量、ゆくゆくは太夫だろ。犬猫じゃあんめぇし、簡単に捨てさせんなよ」

「ぬし、あの娘を女郎にしろと?」

「団子屋よか、華やかに暮らせるんじゃね? 稼げるし」

フクチョーさんとこの娘も、産まれた直後からお目目パッチリの美人顔だったが、ウチの娘だって負けてないよね。ちょっと天パ気味で、遺伝子の十字架背負っちゃってるけと、これぐらいのハンデないとね。何しろ銀さんの血を引いてるってのが本当なら、絶世の美女過ぎるからね。

「でも」

「わーったよ。そんなにあのガキを吉原に置いとくのが嫌なら、産んだ女ごと身請けしてやんよ」

思い切った銀時の台詞に、日輪は「まぁ」と着物の袖で口を覆い、月詠は顔を真っ赤にして、酸欠の金魚のように目玉をぐるぐる、口をパクパクさせた。なんとか気を取り直して「ぬっ、ぬしにそんなカネなんぞあるのか。遊女に背負わされる借金は、半端な額じゃないんじゃぞ。そもそも、所詮、吉原のオンナじゃ。嫁いだところで料理も洗濯もできやせぬ」と、喚く。

「えー別にいーよ。銀さん、一人暮らし長かったから、家事一通りできるし。カネは……とりあえずババァとたまから借りるし」

なぁ、と振り向いた先に、万事屋のからくり家政婦・芙蓉・伊−零號がいた。どうやら、銀時の後を追ってきたらしい。日輪と月詠に会釈をして、手提げ袋から通帳を取り出し、銀時に渡した。
そのしぐさに、初めて芙蓉の存在に気付いた月詠は、なんとか気をとり直した。

「で? 結局、誰なん? 多分、泥酔した時にやらかしたんだと思うけど」

ひょんな関わりからではあったが、銀時は鳳仙と闘い、春雨の傘下から救い出した救世主として、吉原の女達に歓待されることがちょくちょくあったのだ。タダ酒くらって、なんか目の前に乳があったから揉んだよーな、揉まなかったよーな。つーか、揉み放題なんだろここはよォ……などとクダ巻いてた記憶があるような、無いような、アレェ? 的な。

「そんな、顔も名前も知らん女を身請けするというのか。ぬし、正気か」

「所詮、結婚なんざ狂気の沙汰だろ。で? おめぇは知ってるんだろ、その女の名前」

ラチがあかねぇ……と、銀時が視線を日輪に下ろす。日輪がチラッと月詠を見てから「あのね、つく……」と、言いかけた。だが、最後まで言い切る前に、月詠が電光石火のごとく日輪の背後に回り込み、両手で口を塞いだ。

「つく……?」

「えっと、つくえ、つくし、じゃなくて、つく、つく……つくね、つくも……そう、つくもじゃ! つくも太夫!」

「ツクモぉ? どんな字書くんだ?」

「えっと、その」

日輪がゆっくりと月詠の指を顔から引き剥がすと「九十九って書くのよ。数字の、九十九」と、溜息混じりにそう呟いた。

「月詠を姉のように慕っていた娘でね。名も『ツクヨ』に似たようなものがいいというので、長く皆に愛されるようにと、そんな名前にしたのよねぇ」

「そ、そうじゃった。そうでありんした」

「ホントかよ……で? その、ツックーちゃんは今、どこにいんの?」

「お空に」

日輪の口調があまりにも自然だったので、銀時はその意味を計りかね、つい上空を見上げていた。

「え? なに? ウチのヨメさん、飛べんの? 天人?」

「そうじゃなくて、産後の肥立ちがね」

「ハイ? サンゴ?」

「可哀想にね。こんな商売だからせめて長生きできますようにって、こんな名前をつけたってのに、逆に早死にしちまってサ。ああ、墓なんてないよ。借金を負ったまま死んだ遊女なんて、無縁寺の穴に投げ捨てられてお終いだからね」

視線を月詠にやると、コクコクと小刻みに首を振って「そ、その、日輪の言う通りじゃ」と言う。芙蓉が何か言いたそうに銀時の肘に触れたが、銀時は「信じていいんだな?」と、月詠の目を見据えながら尋ねた。

「そんな女が居て、俺のガキを産んで死んだ……で、いいんだな? 後になって『実はあちきが腹を痛めたのでありんす』とか言うヤツが出てくるとか、一切ナシだぜ?」

「だ、大丈夫。本当じゃ」

「ほーん? じゃあ、形見の品のひとつぐれぇはあるんだろうな?」

日輪がうなづくと「ちょいと待っててくださる? 月詠、車椅子を押しておくれな」と言い、客人を残して奥にすっこんだ。

「銀時様、あの方は嘘をついていらっしゃいます」

「元はといや、吉原一の花魁だ。アダっぽい嘘をスラスラついて、数多の男を騙し続けた猛者なのは分かってらぁ」

「銀時様は、それでもよろしいのですか?」

「向こうがそれで良いってんなら、しゃあねぇだろ」

一応、殊勝な覚悟はしたんだけどな。なにせあのドM忍者相手にだって、初対面んときは責任とって、紋付袴姿でご両親に挨拶に行こうとしたんだぜ。もしかしなくても銀さん、誠意の塊じゃね……と、独りごちながら、さりげなく通帳を懐に隠そうとしたが、それは芙蓉がヒョイと取り上げ手提げ袋に戻した。
やがて、月詠が粗末な玉かんざしを手に、戻ってきた。二本の足のメッキは剥げかけで、填められている飾り玉は、安っぽいイビツなガラス玉だった。

「着物だの帯留めだの、ちゃんとしたものは一切合財、借金のカタに取られるから、こんなものしか残っていなくての。なんでも、子供の頃の品だそうじゃ」

「そうけぇ。こいつぁ、俺が貰っても構わねぇんだな?」

そう言うと、銀時はその玉かんざしを受け取ると、芙蓉の髪に挿してやった。月詠は顔を引きつらせ、戻ってきた日輪も「あら」と声を漏らす。

「銀時様、わたくしが頂いてもよろしいのですか? せめて、累様に差し上げるべきではありませんか?」

「いいんだ」

子供を産んでも母親になれなかった女の形見なら、子守りのために生まれながらも子供を産めない女にくれてやるのがお似合いじゃねぇか。親の顔すら覚えてない俺には、まっとうな家庭なんか築けなかったと言わんがばかりに……とは、敢えて言わない。
その代わりに「自惚れんなよ。ただのガラクタが、ただのかんざし掛けになっただけだ。新八の眼鏡掛けみてーなもんじゃね?」と、うそぶいてみせた。





戻ってきた銀時から『実子なのは間違いない』と聞かされ、魂平糖で待機していた万事屋一同は色めき立った。

「残念ながら、奥様は既にお亡くなりになってたそうです。赤様の本名も結局、分からずじまいでした」

「あの女狐共、父親ならせめて名前ぐらいつけろと、勝手なことほざきやがって……だったら、生きてるうちに一報寄越せってゆーんだよな」

お累から受け取った赤子がむずかったので、銀時はソッコーで芙蓉にパスして抱かせる。芙蓉は巧みに赤子を揺さぶって、寝かせつけた。さすが天才科学者・林流山が、愛娘の子守用に開発した機械人形だ。

「いつまでも名無しって訳にもいかないだろイ。アタシらでつけてやるしかないんじゃないかえ」

お登勢が、芙蓉の腕の中の赤子を覗き込む。
そこに、団子屋の親父もひょっこり出てきて「じゃから、ワシがつけてやろうと言っとるんだがのう。この天人開化の世に相応しい、真莉杏奴(マリアンヌ)とか徐世風瓊(ジョセフィーヌ)とか仏蘭姐琶(フランソワ)とか」と、ニタニタ笑った。

「センス悪ぃっ。もーちょい格調高いのはねぇのかよ」

神楽も赤子を触りたそうに眺めながら「じゃあ『セレブ』はどうあるか。格調高いアル」などと口走った。

「おお、それは一生不自由しそうにない名前じゃのう」

「ちょ、ゲームじゃないんだからもっとまじめに考えてくれない?」

「んじゃあ『ジャスアント』。私のとっておきの名前、分けてあげるアル」

「お前のは、厨二病過ぎて駄目なんだよ。おい、そこのメガネ掛け器。俺にばっかりツッコミさせてんじゃねーよ。それとも、なんかいい案あんのか?」

「でも、名付けなんて一生ものですからね、ドキドキしますね。えーと、寺門通……そのままだとアレだから、通る、道、お道、とか?」

「みっちゃん、みちみちアル」

今度こそ本当に銀時の隠し子発覚、ということで駆けつけた志村妙は、やや離れた位置でこわばった笑顔を浮かべながら「せれぶでいいじゃない。インパクトがあって願いもこもってて、読みやすくて。意味だって悪くないし」と、お世辞とも皮肉ともつかない言葉を吐いた。シスコンの弟が「確か、土方さんのところは『ひなた』でしたよね。向こうが明るい意味なら、こっちはもっと派手な名前でいいじゃないですか?」と、それに乗じる。
銀時が頭をぐちゃぐちゃ掻きながら「おい、この惨状どう思うよ、たま」と、嘆いたが、芙蓉はにっこり笑いながら「どんな名前でも、お父さんが呼んでくれるのなら、いい名前だと思いますよ」と答えた。

「私も元は、伊−零號という記号でしたし、万事屋の皆さんがつけてくれた『たま』という名前も、気に入っています」

「え、ちょ……そーいうモンなの?」

「ですよね、せれぶさん?」

芙蓉が呼びかけると、ウトウトしていた筈の赤子が『にぱぁ』と笑った。お登勢がそれを見て「おや、じゃあ、決まりだね」と決めつけ、銀時は「マジでか」と天を仰いだ。
そこに、親父が言いにくそうに「名前は決まったとして……婿殿、ちいと相談が。籍の件じゃが」と、声をかけた。

「銀ちゃん、遂に結婚アルか? 馬車馬のヨに働くアルよ。パピーも出来婚してから本気出したって言ってたアル」

「ちげーよ」

銀時は、興奮気味の神楽を引っぱたいて黙らせる。

「つまり、このガキは、俺の子ってことで届けておきゃいいんだろ、実際そうなんだしな。年季明け前に死んだ遊女だ、どんな借金が残ってるかも分からねぇ。万が一の場合、迷惑かけちまうもんな」

「すまねぇな。婿殿が、正式に累と夫婦になる日は、もう少し先になりそうだ」

「いや、それは永遠に来なくていいけど……ま、どーせ俺ァ、天涯孤独の孤児の身。人別帳(戸籍)なんざ、取っ捕まって死刑になるってぇ時に罪状書に記すために作られたよーなもんだからな。ガキがぶら下がろうが、バツがつこうが、今更だ」

少なくとも、認知だけして放りっぱなしのどっかのフクチョーさんとは一緒にされたくない。

「そうと決まりゃ、さっそく手続きしに行くか。あーいうのって、なんか書類要ったっけ。免許証とハンコあったらいい?」





「よぉおろずやぁああああ!」

怒号と共に、玄関の引き戸が蹴り飛ばされた。応接セットのソファに寝転がり、機械人形の膝を枕にジャンプなんぞを読んでいた銀時は、その声で相手の見当がついているらしく「派手に壊しやがって」とボソッと呟いただけで、紙面から目を離そうともしなかった。

「じゃあかぁしぃ! こちとら、ただでさえ肩身の狭ぇ思いしてんのに、てめぇのせいで、針のむしろどころじゃねーんだよ。針山地獄に血の池地獄なんだぞ、コルァ。日頃はフーテンの馬の骨のくせに、こんな時ばっかり、なに常識人ぶってんだよ、畜生!」

「俺のせいって何? 役場の窓口で、出生届がどーの病院の証明書がこーのってガチャガチャ言われて受理してくれなかったから、こーいうときは幕府筋のコネを使った方が早いって 思って、結野のおにーたま頼ったんだけど? なんか悪かった?」

実際には、結野清明は人別帳の取扱いに直接関与できる役職ではなかったので、事務方の伝手を頼り……ややこしい案件を持ち込んでいるのが元・大物攘夷志士だと祐筆らの間で話題になって、攘夷志士が相手ならばと真選組の近藤勲に話が伝わり、今度は近藤がポロッと伊東鴨太郎の兄、鷹久に『万事屋はてぇしたヤツだな』と漏らした次第。
最終的に、その鷹久が『本当ですね。どこぞの無責任男に爪の垢でも服ませたいものです』と皮肉たっぷりに処理してくれたのだ。

「おかげで、すっかり忘れてたハナシが再燃したんだよ、畜生! 余計なことしやがって」

「俺、フクチョーさんと違って、誠意ある男なのよん」

白刃を向けられても平然とページをめくっている銀時の態度に、土方はハァと深く溜め息を吐いて、応接セットのソファに腰を下ろした。カッとして殴り込んだはいいが、確かに土方に非はあれども、銀時にはない。

「で、そのガキはどこにいるんだ?」

取り繕うように言いながら、懐からタバコを取り出す。無表情に座っていた機械人形が、帯の間に挿していた折り畳み式の携帯電話を取り出して「この赤様です」と、待ち受け画面を見せた。

「普段は、お累様のところにお預けしています」

「お累? 結婚したのか、万事屋」

「してねーよ。要するに戸籍と厄介事はウチ、養育は団子屋ってこった……写真、可愛いだろ」

確かに、大きな目と白い肌が西洋人形のように愛らしい。団子屋の娘のお累って、あのブッサイクだよな? 似てないにも程がある……と、首をひねっていると、銀時が察したらしく「産みの親はおっ死んでて、団子屋が貰い子したんだとさ。どんなブサイクなかーちゃんでも、かーちゃんはいた方がいいもんな。で、どーみても俺の子じゃね? って周囲が言うからサ」と、説明してやった。

「あー……そうけぇ」

そんな状況なら、しらばっくれても良かったんじゃねーの? とも思ったが、それこそ「誠意ある男なのよん」とダメ押しされたら、土方が立ち直れない。

「あ、そうそう、多分フクチョーさんとこの娘サンと、ガッコとかギリギリ同学年みてーだから、よろぴくね」

「は? そ、そうなのか?」

「やだなぁ、もう。てめーのガキの生まれ月も把握してねーの?」

それを言われると辛い。土方はがっくりうなだれながら「ああ、その、済まなかった。玄関の修理代は請求書、回してくれ」と、呻いた。





銀時の隠し子の話を聞いた猿飛が発狂して暴れ回ったり、何故か桂がはっちゃけて女装して「ワタシがママよ」と言い出したり、お妙が何を思ったか婚活を始めて大騒動になったり、外道丸から贈られた祝いの品が生きた「物の怪」で、危うくかぶき町を焼き尽くしそうになったりしたのは、それからしばらく後のお話。





【後書き】銀さんの娘、せれぶの発覚(?)のオハナシ。一部に北宮氏とのなりきりチャットのリライトが含まれています。
なお、九十九を「ツクモ」と読むのは、伊勢物語の歌 「百年(ももとせ)に一とせ足らぬつくもがみ 我を恋ふらしおもかげに見ゆ」に由来しているようです。
初出:15年07月22日
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